第1章 痛くない理由

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 そう言って団体様は消えていった。人の心にずけずけ入り込み、傷つける。そんな教室にもほとほと嫌気がさしてきた。 よいしょ、っと。  昴は休憩時間を有意義に過ごす為、席をたち花壇に向かった。 トマト、見に行こう……。  初夏に理科の授業で植えたプチトマトの苗、それに水をあげるのが『生き物係』昴の仕事になっていた。休憩時間が減るし、水がかかるから嫌っていう理由で皆避けたがるこの仕事だが、今の昴にとっては学校に居るなかで最も楽しみな時間だった。  白い上履きを脱ぎ、お気に入りの靴を手に取る。 「おっと」  ギラリと光る凶器に一瞬動きが止まる。だがすぐに何食わぬ顔でそれをゴミ箱へ捨てる昴。 靴に画ビョウとか、小学一年生並みの脳ミソ。  ため息混じりに靴を履き、グラウンドへ急ぐ。手前の角を曲がろうとした  その時…… 「!? ーーっうわ!」  スッと出てきた障害物に左足をとられ、バランスを崩した体は、冷たいコンクリートの上にドサッと倒れる。
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