孤高のシングラリティ

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――場転。後部格納庫のシングラリティの搭乗口にトシユキ。 トシユキ「やはり来ると思っていましたよ、あなたは」 ――マレノブ、爪をかむのを止める。 マレノブ「そういう物言いは止めてもらおうか、トシユキ二佐。仲間を犠牲にしての出世おめでとう」 ――トシユキ、怒気を込めて。 トシユキ「ふざけないで戴きたいッ! あれはあなたが…」 マレノブ「死んだんだよ、お仲間だけじゃなく、こちらの私もあなたが殺した。これでは連綿と続くシステムを維持は出来ない」 ――マレノブ、非対称の笑顔をみせる。 ――それと同時に、艦が大きく揺れる。 トシユキ「砲撃?」 ――二度、三度と轟音が鳴り響き、艦が更に大きく揺れる。 ――マレノブ、その隙に自分専用のシングラリティに搭乗する。 マレノブ「そうだ、もう一人の私は死んでも、この私は生きている。すべてはここからじゃないか」 ――トシユキ、揺れが収まるとともに自機シングラリティに搭乗する。 トシユキ「管制コントロール、すべてこちらへ回せ」 ――擱座していたマレノブとトシユキのシングラリティが立ち上がる。 マレノブ「無駄だ、この艦にシングラリティを搭載した時からシステムは全権掌握している」 トシユキ「だとしてもッ!」 ――トシユキ機、マレノブ機に掴み掛かる。が、すんでのところでそれを躱すマレノブ機。 マレノブ「まぁ、落ち着きたまえ。トシユキ君。君は何も疑問を感じなかったのか? この戦いの中で」 トシユキ「疑問だと?」 マレノブ「そうだ、消えた彼女たちの事だ」 ――カットイン、トシユキ。その脳裏にフラッシュバックする映像。今まで目の前で消えていった者達の顔。 トシユキ「あなたは何か知っている。そう踏んではいた」 マレノブ「ならばお話ししよう、この世界のシステムを」 トシユキ「システム?」 マレノブ「簡単な話だ、今話している君は私にとって本当の君ではない。また同じように君にとっての私も、本当の私ではない。それがシングラリティ、いわゆる特異点だ」 ――トシユキ、管制システムにハッキングを掛けつつ。 トシユキ「特異点?」
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