孤高のシングラリティ

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マレノブ「そうだ、なんだってこんなものが出来上がったかは皆目見当もつかないが、君は仲間の消失に立ち会っているね?」 トシユキ「……」 マレノブ「同型艦を撃破し、帰り着くとすべての乗組員を失っていた。我々はもっと早く、この置かれた状況と向き合うべきだった。そもそも、私は戦争なんて馬鹿げていると思っている。なんだってそんな非生産的な現実と向き合わなければならない? それ とも、軍人さんなら答えてくれるのかな?」 トシユキ「それには、俺は答えられそうにもない」 マレノブ「だよねぇ、仲間を失ってセンチメンタリズムにふける君が答えられるわけもない。話を戻そう。シングラリティはおそらく、我々を試すシステムではないかと私はみている」 トシユキ「試す?」 マレノブ「そうだ、こんな事馬鹿げていて誰にも話す気にはなれなかったが……。我々を見ている『天の目』が、作り上げた浄化機能の一環なのではないかと」 トシユキ「天の目? 浄化?」 マレノブ「いわば、お互いがお互いを食い合うバクテリアみたいなものさ。そうして、不均等になった世界を清算していると私は考えている。」 トシユキ「……」 マレノブ「その監視役として選ばれたのが我々、シングラリティだ」 トシユキ「我々?」 マレノブ「君が仲間を失った時だ。その時、なぜ君はその場にいなかったか考えたことはあるか? 答えは単純だ、私が君をシングラリティの搭乗者に認定した。ようは特異点として作り上げたからだよ」 トシユキ「全ては仕組まれたことだったのか……」 マレノブ「厳密には違う、だがそんな事はどうでもいい。私とともに来い、ともに戦争のない世界を作り上げようじゃないか」 トシユキ「悪いが、私はあなたと同じ道は歩めない」 ――トシユキ、スロットルを全開まで押し上げる。トシユキ機が再びマレノブ機に掴み掛かる。マレノブ機は後退し、後部甲板から飛翔する。 トシユキ「火器管制、すべての砲撃を対象に回せッ! く、ダメか……」 ――マレノブ機、手近な艦に張り付き、艦橋を踏み抜く。まるで、苛立ちを隠せない子供のように。 マレノブ「言い忘れてないはずだよなぁ、私は馬鹿げたことは嫌いだと。もし私と戦うなら、身一つで来い」 ――トシユキが吠え、呼応するようにトシユキ機の眼部センサーが光る。 Aパート終了。アイキャッチ挿入。
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