孤高のシングラリティ

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――場転。ミサイルが迫り、大空へ飛翔するトシユキ機。 マレノブ「思い出せ、彼女を失った時の無力さを。君は一人だ、何も出来ない」 ――宙を舞い、回避行動を取るトシユキ機。ミサイル同士を激突させて数を減らす。更に高速にマレノブ機に近づく。 マレノブ「足掻くなッ! 墜ちろよッ! 一人寂しく死んじまえッ!」 ――マレノブ機の眼部センサーが妖しく光り、艦隊の対空砲撃がトシユキ機を襲う。海中に没するトシユキ機。 マレノブ「墜ちたか……。いや、私に刃向かう奴は全てが決まって尚足掻く。なれば、こちらも抜かりは無いぞ。海の藻屑にしてやる」 ――艦隊の対潜ミサイルがトシユキ機の没した辺りへ撃ち込まれる。飛沫を上げる海面。 ――その勢いに乗じ、複数の潜水艦が浮上する。その一機を盾にしていたトシユキ機、飛翔し空母の甲板へ乗り移る。 マレノブ「馬鹿なッ! まさかシステムが奪還されたのか?!」 トシユキ「一人じゃない、俺は……。一人じゃないッ!」 ――マレノブ機、艦のフェイズドアレイレーダーを引きはがし、投擲する。 ――飛翔するトシユキ機、左手に手にした鞘でそれを弾くが、姿勢を崩す。それを見逃さないマレノブ。 マレノブ「抜かったな!」 ――マレノブ機、踏み抜いた艦の艦首から迫撃砲をひっくり返し、砲塔を持ち巨大なハンマー代わりにする。振り上げるマレノブ機。 マレノブ「当たると痛いぞッ!」 ――トシユキ機、甲板へ着地と共に刀と鞘を空へ投げ込む。マレノブ機の懐に入り込み、空いた両の手でマレノブ機を突き上げる。 トシユキ「お互い様だッ!」 ――マレノブ機、砲塔を落とすが、そこから砲身を力ずくで抜き取る。 マレノブ「このシングラリティはなぁ、対シングラリティ用に造られた第二世代一号機なんだよ。いわゆるアンチ・シングラリティだ、君のシングラリティで敵うはずがない」 トシユキ「だとしても!」 ――トシユキ機、捨てられた砲塔に向かって、背に仕込まれた小刀を投擲する。爆散する砲塔。炸裂した無数の砲弾に被弾するマレノブ機。広がる火薬の煙。 マレノブ「くっ!?」 ――ドンという物音の方へ、背に仕込まれた短装砲を撃ち込むマレノブ機。 マレノブ「砕けろ、砕けろよッ! 邪魔なんだよッ!」
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