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売りつけるまでだ。俺は金を持つ者
の味方なんでな。たとえば、今あん
たらが相手してる国 ――とか?」
イチル「待て!」
マレノブ「(挑発の笑みで)」
イチル「(懇願で)待ってくれ……。
それは待って欲しい」
マレノブ「待つ、ってのは?」
イチル「(悔しそうに)……本国へ帰
還した後、軍上層部に掛け合う」
マレノブ「それで?」
イチル「なんとか上を説得し、許可を」
マレノブ「つまり、金は用意するから、
売って欲しい」
イチル「……(頷く)」
マレノブ「わかった」
イチル「感謝する」
マレノブ「ただし――その場合、さっき
提示した金額の二十%を上乗せする」
イチル「なっ!」
マレノブ「当然だ。いいか、俺は慈善事
業でやってんじゃねぇんだ。俺を繋ぎ
止めておきたいってんなら、それ相応
の対価が支払われるべきだろう」
イチル「……」
マレノブ「それともう一つ、仮にあんた
が上に掛け合って、許可が下りなかっ
た場合についてだ」
イチル「……」
マレノブ「散々待たせて、やっぱり買えま
せん、じゃ話にならねぇ。もしかすると
この待機時間の間に、俺の商品を購入す
るはずだった客が心変わりしちまう、っ
てなこともありえる話だ。ようするに保
障だな」
イチル「……」
マレノブ「もし、許可が下りなければその
時は――この、戦艦クサナギを貰い受け
る」
イチル「!」
マレノブ「これが、条件だ」
イチル「……ハイエナがっ」
マレノブ「それは褒め言葉だ。お嬢ちゃん」
マレノブを憎悪の目で睨むイチル。
余裕のマレノブ。
○同・甲板
マレノブのヘリコプターがプロペラを
回し、離陸準備をしている。
マレノブがヘリに乗り込む。
それを見届けているイチル。
マレノブの声「三日待とう。それまでに然
るべき準備をしておけ。契約が成立すれ
ば最高の兵器があんたの物になる。不成
立ならばこの艦は俺の物だ」
離陸し、空へと飛び立つヘリ。
イチル「……」
○海上(夜)
静かな海を、クサナギがゆく。
○戦艦クサナギ・艦長室(夜)
席に着き、途方に暮れるイチル。
と、ノックが聞こえ
トシユキの声「トシユキです」
イチル「……入れ」
トシユキが入室してくる。
トシユキ「……遺体の収容、完了しました」
イチル「……そうか」
トシユキ「……艦長」
イチル「……」
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