第1章

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 売りつけるまでだ。俺は金を持つ者  の味方なんでな。たとえば、今あん  たらが相手してる国 ――とか?」 イチル「待て!」 マレノブ「(挑発の笑みで)」 イチル「(懇願で)待ってくれ……。  それは待って欲しい」 マレノブ「待つ、ってのは?」 イチル「(悔しそうに)……本国へ帰  還した後、軍上層部に掛け合う」 マレノブ「それで?」 イチル「なんとか上を説得し、許可を」 マレノブ「つまり、金は用意するから、  売って欲しい」 イチル「……(頷く)」 マレノブ「わかった」 イチル「感謝する」 マレノブ「ただし――その場合、さっき  提示した金額の二十%を上乗せする」 イチル「なっ!」 マレノブ「当然だ。いいか、俺は慈善事  業でやってんじゃねぇんだ。俺を繋ぎ  止めておきたいってんなら、それ相応  の対価が支払われるべきだろう」 イチル「……」 マレノブ「それともう一つ、仮にあんた  が上に掛け合って、許可が下りなかっ  た場合についてだ」 イチル「……」 マレノブ「散々待たせて、やっぱり買えま  せん、じゃ話にならねぇ。もしかすると  この待機時間の間に、俺の商品を購入す  るはずだった客が心変わりしちまう、っ  てなこともありえる話だ。ようするに保  障だな」 イチル「……」 マレノブ「もし、許可が下りなければその  時は――この、戦艦クサナギを貰い受け  る」 イチル「!」 マレノブ「これが、条件だ」 イチル「……ハイエナがっ」 マレノブ「それは褒め言葉だ。お嬢ちゃん」   マレノブを憎悪の目で睨むイチル。   余裕のマレノブ。 ○同・甲板   マレノブのヘリコプターがプロペラを   回し、離陸準備をしている。   マレノブがヘリに乗り込む。   それを見届けているイチル。 マレノブの声「三日待とう。それまでに然  るべき準備をしておけ。契約が成立すれ  ば最高の兵器があんたの物になる。不成  立ならばこの艦は俺の物だ」   離陸し、空へと飛び立つヘリ。 イチル「……」 ○海上(夜)   静かな海を、クサナギがゆく。 ○戦艦クサナギ・艦長室(夜)   席に着き、途方に暮れるイチル。   と、ノックが聞こえ トシユキの声「トシユキです」 イチル「……入れ」   トシユキが入室してくる。 トシユキ「……遺体の収容、完了しました」 イチル「……そうか」 トシユキ「……艦長」 イチル「……」
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