第1章

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  「肥え太った金臭ぇブタ共が何人集まろうが知ったこっちゃ無ぇ。せいぜい俺の踊りに金を落として行ってくれ」 「ひ、ひひ。違ぇ無ぇ。あっひも旦那のお蔭で仕事が増えてありがてぇかぎりでさぁ」 「はっ。そりゃあ良かった」 三条は金持ちが嫌いだった。少なくともこのクラブに出入りする金持ちはみんな屑だと思っている。奴らは金のためなら何でもする。 金のために何でもする奴は屑だ。だが、そんな屑にも二種類いる。自分が屑だと自覚している奴と、自分が正義だと勘違いしてる奴。前者は三条のような貧乏人で、後者は金持ち。 そしてこの死体屋も間違いなく、前者の屑だ。三条にとってはそれだけで、十分信頼に値する。互いに交わす下卑た笑みにも、どこか無邪気な色が混じる。 「今日も一晩じゃ捌けねぇくらい、お前の仕事増やしてやっから期待しとけ」 「ひ、ひっひ……。相変わらどぅおっかねぇ人だ。そういやぁ旦那ぁ、今日のふテージで……」  
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