01.雑木な俺

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「ふぁー……」  正明が眠気まなこであくびをする。  不意にテーブルの上で携帯がバイブし、正明の手が伸びる。  着信表示は清水弘、 「はいもしもし――」 『当たったぁああああああッ!』  いきなりの大音量に、正明が顔をしかめる。 「……どうしたー、ヒロ。食中毒か?」 『ばっか、腹壊してこんな大喜びする奴があるかよ! 今の俺は吹かしたP-8Sモーターみたいになってんだッ!』 「はぁ?」 『ヒートアップしてるってことだよ!』 「あー……」  気のない返事で天井を見上げる正明。 「職場(うち)の重機のモーターも、そんぐらい元気だったらなあ……」 『お前んとこの重機って言うと……WH03か』 「そうそう、ワーカー(w)ホリック(H)シリーズの古いやつ。重いもの担ぐと、定期的にガクつくんだよ」 『ああ、磨り減ったギアが空回り起こしてるんだな。ってか、現役稼働中の重機で、その不具合はまずいだろ?』 「修理するにも高くつくらしくてなー。パーツが特注になっちまうんだと」 『03は生産終了した一世代前の型だからなあ……新機を入れる予定は?』 「親方が『そのうち買う』って言い出してから、もう一年半」 『あちゃー……』 「ケアするより、ぶっ壊れるまで使い倒そうって腹なんだろうな。働き蟻の末期(まつご)だよ」 『相変わらず煤けてんなあ、お前』  電話の向こうで弘が笑う。 『そんな正明君に、俺が最高のイベントをプレゼントしてやろう! お前の煤けた情熱モーターに、火が入ること間違いなしだ!』 「サンキュー、ありがた迷惑」  正明はあくびをしながら答える。 『明日、仕事が終わってもまっすぐ帰るなよ? 19時に福生(ふっさ)の駅で落ち合おう』 「福生?」 『確か、お前の現場から近かかったよな?』 「いや、まあ、割と近いけど……」 『じゃ、明日、19時に駅前な! 絶対来いよ!』  電話が切れる。 「相変わらず一方的なヤツ……」  正明がため息をつきながら電話を放り出す。 「……ま、どうせ予定なんてないんだけど」  テレビでは、メックバトルの放送が続いていた。
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