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夜、ライトアップされた峠道を、二機のメックが駆け抜ける。
曲がりくねった公道は完全に通行止めで、メックバトル用の特設ガードレールでコースが定められている。
駆動するモーター等の効果音とともに、公道を走るメックの、さまざまな角度、パーツのカットが入る。
二機のメックが走るコースには、トレーラーやコンテナといった様々な障害物が設置されていて、通常の蛇行する道から外れた「山下り」の箇所すら存在する。
ガードレールの外周には、アベック、家族連れ、米兵など、老若男女さまざまな人間が観戦し声援を飛ばす。
二機のメックが、コース上の積み重なったコンテナの壁に向かって加速する。
――ダンッ
二機の足が同時に激しく地面を踏み鳴らし、メックが宙を舞う。
双方のメックが、積み重なったコンテナの端を足で捉えて駆け上がっていく。
人体と見比べても全く見劣りしないウォール・ラン(壁走り)――
最短のコースを見極めた一機が先行し、コンテナの頂点に手をかけて、足と腕の駆動で器用によじ登る(クライム・アップ)。
やや外に回って遅れたもう一機は、中間コンテナの端を強烈に蹴り込んで高く跳び上がり、閉脚跳び(ヴォルト)で一気にコンテナを飛び越した。
――わぁあああああああッ!
観客の声援がヒートアップする。
コンテナを越えて着地したメックそれぞれが、巨体に加わった慣性によってアスファルトの上をスライド、
――ガガガガッ!
踏ん張ってバランスを整える二機の足が、アスファルトの表面を滑って火花を散らす。
着地の勢い殺さず、体勢を整えた二機がすぐさま疾走を再開する。
『ヒュウッ!』
『そらそら行けぇぇぇぇえええ!』
走り抜けるメックの風に煽られながら、思い思いの野次を飛ばす観客。
少々の直線の後、二機の前に迫り来る、路面に角度のついたヘアピンカーブ――
唸りを上げるメックのモーター駆動音。
二機のメックがやはり加速する。
ヘアピンカーブのガードレールの外、観客の最前列に、
「わ、わ、わ――」
と、慌てふためく正明の姿があった。
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