02.峠のメックバトル

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 ――ダンッ  二機のメックがアスファルトを蹴ってヘアピンカーブに飛び込む。 正「うわぁあああああああ!?」  迫り来るメックの巨体に驚いて、正明がたまらず声を上げる。  スピードスケーターのように機体を傾けたメックが、ヒールのローラーでコーナーを高速漂流(ドリフト)する。  ――ギャギャギャギャギャリッ  メックの足から飛ぶ火花が、ガードレールの外にいる正明を襲った。 正「~~~~~ッ!?」  顔の前に腕をかざし、正明が言葉もなく息を呑む。 弘「いやっほぉぉぉぉぉう!」  隣では細身でメガネの弘が、拳を突き上げて大絶叫。  二機のメックがコーナーを滑りきってまた疾走に戻る。 正「もろ浴びた!? 焦げくせえ! あじじじッ!」  正明がTシャツを払って大騒ぎ。 弘「どうよマッサ! この臨場感! これが生のメックバトルだぜッ!」  弘が興奮気味にメガネを押し上げて正明を見る。 正「どうよっていうか……シャツ焦げたし」 弘「記念だよ記念。デッドヒートの火傷痕は、メックバトル一番の土産だって。――ほら、飲め!」  弘が肩掛けバックからビールを取り出し、正明に押し付ける。 正「お前、酒弱くなかった……?」 弘「気分だけさ。バトルの時は一本だけ飲むことにしてるんだ」 正「――って、なんだノンアルコールかよ。しかもなんか、めちゃくちゃヌルい……」 弘「ビールは常温! それがグローバルスタンダード!」 正「ああ、そう……」  正明がため息をついて受け取る。  弘がプルトップを起こした瞬間、泡がスプラッシュする。 弘「うわァ――っはははははッ!」  泡のハネがメガネを汚しても、弘はなおも上機嫌だった。 正「楽しそうね……」  熱のない様子で正明が言う。 弘「あったりまえだろ? 西東京地区メックバトルの聖地、梅ヶ谷峠の折り返し地点、ヘアピンカーブ最前列のアリーナ! メックの火花を浴びながら飲むヌルいビール! こんな贅沢他にないって!」 正「メック好きなのは知ってたけど、まさか生で観戦するほどとはね……」    正明も恐る恐るビールのプルトップを起こす。 弘「マイナー、メジャー、レジェンド――バトルランクに関わらず、日程さえ合えばこうして観戦しに来てるんだ」 正「へー?」
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