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弘「でも今日のレースは――」
ギャギャギャギャギャリッ――
弘の言葉を遮って、また二機のメックがカーブを行き過ぎる。
弘「――今日のレースは、特別なんだ」
正「特別?」
弘「最高に、熱いって意味さ」
弘が満面の笑みで言う。
弘「……なあマサ、昔、二人でメックのプラモで遊んだのを覚えてるか?」
正「ん? ああ――」
――短い過去回想カット
少年時代の正明と弘が、それぞれ思い思いのメックのプラモデルを手に、積み木や雑誌、椅子といったありふれたもので作ったコースで、パルクールごっこに興じている。
弘「とぉぉぉぅ! 西島雄介、ムーンサルトを思わせる伸身ひねりの連続、これはもう、ムーンサルト・ムーンサルトというべきではないでしょうかッ!」
正「――真面目にやれよヒロ。コースの攻略は自由だけど、バトルにはちゃんとルールがあるんだから!」
弘「えー? だから、俺の西島号は、椅子からムーンサルトして着地、跳ね返る勢いでもう一回ムーンサルトしたんだよ」
正「リアルにやれっていってんの」
正明がプラモを動かす手を止める。
正「メックでムーンサルトの連続とか、着地した時点で機体がバラバラだろ? カスタムにもよるけど、メックは重さが2トン近くもあるんだぞ。そういうところをちゃんと頭に入れて技を構成を考えろよ」
弘「別にいいじゃんか、遊びなんだから。そんなムキになるなよぅ」
正「あのな、ヒロ――」
――シーンが峠の現代へと戻る
弘「『なんでも本気じゃなきゃ、面白くないじゃないか。一番面白いのは、本気になった瞬間なんだ』」
弘が懐かしむように目を細めて言う。
正「そんなことも言ってましたね……」
正明が苦々しげな顔でノンアルコールのビールを煽る。
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