02.峠のメックバトル

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弘「でも今日のレースは――」  ギャギャギャギャギャリッ――  弘の言葉を遮って、また二機のメックがカーブを行き過ぎる。 弘「――今日のレースは、特別なんだ」 正「特別?」 弘「最高に、熱いって意味さ」  弘が満面の笑みで言う。 弘「……なあマサ、昔、二人でメックのプラモで遊んだのを覚えてるか?」 正「ん? ああ――」  ――短い過去回想カット  少年時代の正明と弘が、それぞれ思い思いのメックのプラモデルを手に、積み木や雑誌、椅子といったありふれたもので作ったコースで、パルクールごっこに興じている。 弘「とぉぉぉぅ! 西島雄介、ムーンサルトを思わせる伸身ひねりの連続、これはもう、ムーンサルト・ムーンサルトというべきではないでしょうかッ!」 正「――真面目にやれよヒロ。コースの攻略は自由だけど、バトルにはちゃんとルールがあるんだから!」 弘「えー? だから、俺の西島号は、椅子からムーンサルトして着地、跳ね返る勢いでもう一回ムーンサルトしたんだよ」 正「リアルにやれっていってんの」  正明がプラモを動かす手を止める。 正「メックでムーンサルトの連続とか、着地した時点で機体がバラバラだろ? カスタムにもよるけど、メックは重さが2トン近くもあるんだぞ。そういうところをちゃんと頭に入れて技を構成を考えろよ」 弘「別にいいじゃんか、遊びなんだから。そんなムキになるなよぅ」 正「あのな、ヒロ――」  ――シーンが峠の現代へと戻る 弘「『なんでも本気じゃなきゃ、面白くないじゃないか。一番面白いのは、本気になった瞬間なんだ』」  弘が懐かしむように目を細めて言う。 正「そんなことも言ってましたね……」  正明が苦々しげな顔でノンアルコールのビールを煽る。
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