友達と金木犀と。

2/2
前へ
/2ページ
次へ
今私が何処にいて、生きてるのか、それとももうこの世にはいないのか……。 そんな事、どうでも良くなる位その「光」は居心地が良かった。 このままでもいいやって、例え目が覚めなくともこの暖かい「光」に包まれているのならこの先どうなろうと構わない。 ンニャア……。 猫の声が私の頭の中から聞こえてきた。 「え……」 鳴き声みたいな声がして思わず口から声をこぼす。 その瞬間「光」が強くなった。 そして段々と「光」は弱くなり、目が開けれる位に淡い「光」になった。 そして気付く。私は森の中のような場所で、人が少し歩ける位の箱の様な空間にいることを。 「これは……。私は……?」 辺りを見渡す。あきらかに、現実とは思えない。端から端まで歩いてみる。やはり、出口のようなものはない。 辺り一面木と草原、そして、 そう……金木犀の懐かしい匂いがした。いい匂い。何故か胸がせつなくなる。 きっと私にとって大事な記憶にあるのだろう。 「私、どうしてここにいるんだろう?やっぱり……。」 「金木犀、それは君のとても大事な思い出だょ」 その声に驚き後ろを向くと、小学3年生位だろうか?女の子の身なりをした子が私を見つめ立っていた。優しい淡いグリーンの瞳で、寒いのだろうか?白いモコモコのダウンを羽織っていた。少女は、 「大丈夫。きっと大丈夫。金木犀の香りが、まだ君に届くのなら私が大事なあの場所へ連れていってあげるよ」 頭が混乱している。まだ大丈夫、ということは私は生きてる? 私は一体何をした? 頭の中混乱している事を少女は察したのか、 「取り戻すの。始めは受け止め切れないかもしれない。怖くて、悲しみが君を襲うかもしれない。……でも。」 私をまっすぐ見つめて 「後悔と苦しみから逃げるために君はここにいるんじゃない」 少女は微笑み、 「私はわかる。君は、君のまま。記憶が今はなくても、私の事、昔から一緒にいる大切な友達だって感じているでしょう?」 そうだ。私はこの子を誰よりも知っている。とても、とても大切な友達……そう感じた瞬間何故だろう?涙が溢れた。胸の奥が熱い。 少女はその理由を知っているようだった。そして優しく私を見つめて話す。 少女は、箱のような空間の中央へ歩き始めた。行く?どこへ? 「さぁ」 少し照れながらも、手を繋ぐ。小さな手、暖かい手。 私達は中央へ歩き始めた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加