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今私が何処にいて、生きてるのか、それとももうこの世にはいないのか……。
そんな事、どうでも良くなる位その「光」は居心地が良かった。
このままでもいいやって、例え目が覚めなくともこの暖かい「光」に包まれているのならこの先どうなろうと構わない。
ンニャア……。
猫の声が私の頭の中から聞こえてきた。
「え……」
鳴き声みたいな声がして思わず口から声をこぼす。
その瞬間「光」が強くなった。
そして段々と「光」は弱くなり、目が開けれる位に淡い「光」になった。
そして気付く。私は森の中のような場所で、人が少し歩ける位の箱の様な空間にいることを。
「これは……。私は……?」
辺りを見渡す。あきらかに、現実とは思えない。端から端まで歩いてみる。やはり、出口のようなものはない。
辺り一面木と草原、そして、
そう……金木犀の懐かしい匂いがした。いい匂い。何故か胸がせつなくなる。
きっと私にとって大事な記憶にあるのだろう。
「私、どうしてここにいるんだろう?やっぱり……。」
「金木犀、それは君のとても大事な思い出だょ」
その声に驚き後ろを向くと、小学3年生位だろうか?女の子の身なりをした子が私を見つめ立っていた。優しい淡いグリーンの瞳で、寒いのだろうか?白いモコモコのダウンを羽織っていた。少女は、
「大丈夫。きっと大丈夫。金木犀の香りが、まだ君に届くのなら私が大事なあの場所へ連れていってあげるよ」
頭が混乱している。まだ大丈夫、ということは私は生きてる?
私は一体何をした?
頭の中混乱している事を少女は察したのか、
「取り戻すの。始めは受け止め切れないかもしれない。怖くて、悲しみが君を襲うかもしれない。……でも。」
私をまっすぐ見つめて
「後悔と苦しみから逃げるために君はここにいるんじゃない」
少女は微笑み、
「私はわかる。君は、君のまま。記憶が今はなくても、私の事、昔から一緒にいる大切な友達だって感じているでしょう?」
そうだ。私はこの子を誰よりも知っている。とても、とても大切な友達……そう感じた瞬間何故だろう?涙が溢れた。胸の奥が熱い。
少女はその理由を知っているようだった。そして優しく私を見つめて話す。
少女は、箱のような空間の中央へ歩き始めた。行く?どこへ?
「さぁ」
少し照れながらも、手を繋ぐ。小さな手、暖かい手。
私達は中央へ歩き始めた。
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