第1章

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「……慰めてくれているの……?」 「さあな。……涙も甘露だ。加えてお前は魂が輝いている」 「……あなたこそ……その瞳……暁の空のようだわ」 「……お前は……」 そして、姫君が龍に頬を寄せて身を預けると、龍が戸惑いを浮かべた。 「この眼は……仲間からは血の色だと忌み嫌われている……お前は違うのか?」 「……綺麗だわ……それに……あなたは優しいのね」 姫君が微笑みを浮かべて龍にもたれる。最初の恐怖は消え、龍のぬくもりに、どこか安らいでさえいた。 龍は姫君から香る匂いに、天界のどの花にもないものと酔いしれた。しかも姫君は恐れも忘れて血の色の眼を暁の空の色だと言う。 「……気に入った……」 「え……?」 「これから毎夜通おう。そうして、お前を私の伴侶にする……」 それが、出逢いだった。
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