第1章

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龍が姫君に合わせて頭を下げ、触れやすいようにする。互いに意外なことだった。 ──私に気遣ってくれている? ──何故、この少女に触れさせている? 姫君が龍の頭を撫でる。龍は知らず喉を鳴らしていた。その様子に、姫君のなかで張り詰めていた何かが、ふつりと切れてほどけた。 「……お前は何故に泣いている?」 「……あ……」 言われて、姫君が慌てて頬を拭おうとすると、龍が舌先を出して姫君の涙を舐めとった。
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