序章 悠久の時を生きる少年

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夕暮れ時 険しい山道から少し逸れ、木々の間を駆け抜けた先には、街全体を一望出来る断崖があり、そこには夕陽と街並みの幻想的な光景を観ながら黄昏ている少年が居た。 「此処だけは何年経っても変わらない……いつ来ても僕を受け入れてくれる……」 少年の名前は、卜部 未春(うらべ みはる)といい、十歳の生誕式の後、原因不明の不老不死となった。 不老不死となった当初は、周りの人との違いを感じず、普通の子供と同じ様に生活をしていた。 だが、十数年が経った頃には身体的に成長しない未春を周りは不気味に思い、当の本人もそれを感じた。 自身を気味悪く思い始めた未春は、友と呼んでいた者達から身を遠ざけ、自身という存在を消そうと自傷行為を行う様になった。 「何故僕だけ……何故僕だけがこんな呪いに……どうして!?」 苦渋を舐める未春の部屋は、壁紙が爪で引っ掻いた様にボロボロになり、所々血が付着している。 更には、重ね書きされ過ぎて何を書いているのか解読出来ない文字が壁一面を埋め尽くしている。 時の経過とともに、自身の居場所と存在が無くなっていく……
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