序章 悠久の時を生きる少年

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時が経ち、未春の両親が死んだ。 その時の未春にとって、両親は唯一の心の拠り所であった。 幾度、未春の事を自分の子供では無いと虐げられても…… 幾度、未春が両親を「お父さん、お母さん」と呼ぶ度にヒステリックになり、自身の体を傷つけられようとも…… 幾度、両親に騙されて住処である城の外に閉め出されて野獣に襲われて血塗れになっても…… 齢十の少年の心には、両親が唯一の拠り所として映っていた。 だが、その拠り所も失い、心が壊れていく最中で未春は運命の出会いをする。 両親が死んでから数百年が経った頃。 未春は旅から戻り、とある場所にいた。 そこは、不老不死となる前…… 本当の少年出会った頃、数人の友と共に夕陽に染まる街並みを見ていた断崖の上である。 未春は夕暮れ時の景色に魅了されながら、ここ数百年の旅のことを思い起こしていた。 旅に出るきっかけは、両親の死と自身の見聞を広めるため。 「変なの……」 不老不死となった当初、自身を傷つけていた頃とは随分変わったと、自身の変化に少し自嘲気味に声を漏らした。
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