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……長い、静寂の後。
は、と。
息をするのも忘れてしまっていたかのように、羽村は淡い吐息を漏らした。
それがいやに扇情的で、暴走してしまいそうになる。
じわり、掴んだ彼女の腕の体温が、わずかに上がった気さえ、した。
いつものように強引に、ここまで連れて来た。
だけど、いつもとはやっぱり違うと感じる。
……それが、もう、答えなのかもしれない。
甘く切ない表情を浮かべた後で、羽村は何故か俺の腕をほどき……
「もうっ!」
なんて不満そうな声をあげて俺の腕を叩いてきた。
「いてっ」と思わず反応してしまったが、もちろん大した痛みはない。
むしろただの、じゃれ合いの一環にも思える。
だからそれが、嫌がっているとか、拒絶とか、そういう類いのものではなく。
単純に、照れ隠しだとすぐにわかった。
……んっとに、可愛いな、コイツ。
思わず笑ってしまうのを堪えて、わざとふざけてみることに決めた。
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