閑話

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 「‥‥五カ国対抗雪合戦?」  冬の寒さが肌を突き刺す今日この日に何を血迷ったことを、と。  影里は布団の中で丸くなりながら怠惰を隠そうともせずに問う。  「催し物として、でしょう? 俺、あんまりそういうの好きじゃないなぁ」  「ですが、この催し物は我が領内、《不戦の平原》にて行われます。開催国として参加しないわけには‥‥」  「鈴就様と、赤井さん。あと女中さんがいれば、将の頭数は揃うんじゃないですか?」  《不戦の平原》で、とはなかなか催し物らしい。  あの場所ではいつ如何なる時にも争い事を持ち込み、あるいは起こしてはならないという、《暗黙の了解》がある場所だ。  因みに先代・丹羽茂就はあの《不戦の平原》にて和平交渉を行い、この緋ノ国に平和をもたらしたという。  「軍師さんは何故、参加を拒まれるのですか?」  君主・鈴就は唇を尖らせた。  因みに現在、影里は鈴就の目の前で布団にくるまっている。なんたる無礼か。  「え、寒いからですけど」  「身体を動かせば暖かくなりますよ?」  「あー、ほら。俺、軍師じゃん。身体よりも頭を使う仕事の方が」  「雪合戦。つまり合戦です。軍師さんの軍略も必要になってくるかもしれません」  「うん、ちょっと熱があってさ。大事をとって寝てたいなって」  「雪で冷やしましょう。熱が覚めるやもしれません」  「待って鈴就様。だんだん適当な返しになってない?」  「君主命令です。竹崎影里軍師殿、雪合戦に参加しなさい」  「君主命令!? そんなことで!?」 ◆◇◆  
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