8人が本棚に入れています
本棚に追加
影里はひらりと跳び、屋根から飛び降りて着地した。
「どちらへ?」
「鈴就様の所。そろそろ周りの国が動き始める頃だからね‥‥」
「‥‥それは、例の《天ノ国》と関係が?」
「まぁね」
《天ノ国》。
突如現れたらこの国は、瞬く間に青ノ国のほぼ半分の領地を制圧、他の国までも呑み込まんとする勢いを見せた。
《天ノ国》の王・織田揚羽(オダ アゲハ)は、女性でありながら並外れた知勇を持ち、魔法すらも自在に操ると言われている。
彼女が従える兵は皆、鍛えぬかれた精鋭ばかり。並の兵ならばあっさり倒されてしまう。
その他にも、見たことのないような兵器を使うなど、噂の独り歩きとも思える話が広がっているが‥‥
「大丈夫だよ。例え天ノ国が攻めてこようと、俺達なら勝てるさ。皆の力と、俺の知恵があれば、ね」
影里は、屋根からこちらを見下ろしている昌孝に、にかっと笑顔を向けた。
◆◇◆
<勝木城・天守>
「‥‥東には日の出の勢いを見せる青ノ国に天ノ国。西には金ノ国‥‥大国に囲まれた緋ノ国は、双方の動きに警戒するのに精一杯‥‥と」
「ま、今までは何とかなってたみたいですど、そろそろ危ないですよ、鈴就様」
「‥‥‥‥」
壁に寄りかかり、地図を眺めて言う影里の言葉に、現丹羽家党首・丹羽鈴就は眼を閉じる。
齢十五にして一城の主、か。
養父は一線を退き、兄は病で動けない。
彼が自分の借り小屋に訪ね、身分を明かした時は流石に驚いた。
家を存続させるための苦肉の策としか思えなかったが‥‥
(‥‥《曰く付きの魔法使い》、ね)
付きの忍に調べさせた所、どうやら鈴就には生まれ持った超常の力があるらしく、それを疎まれて捨てられた、とか。
最初のコメントを投稿しよう!