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それを知ってか知らずか、先代の当主である丹羽茂就は鈴就を拾い、養子とした。
「‥‥忍が調べてくれてますけど、多分近いうちに戦になりますね」
影里は眼を閉じたままの鈴就の目の前に地図を広げ、手にした羽扇で地図を指す。
「攻め来るは青か天か。恐らくはどっちかですね。お互いに焦ってますから。いつまでも国削りあっててくれれば良かったんですけど‥‥」
「‥‥‥‥」
「青ノ国の龍堂青嵩はキレ者ですから。ここで緋ノ国を脅かして天ノ国との戦いを一歩優位に立とうって考えたんです」
「‥‥龍堂、青嵩‥‥」
「名前、聞いた事あります? 根っからのお坊っちゃまで、英才教育の塊みたいな人ですよ。頭も良くて剣も使える」
教育さえすれば誰でも伸びる訳ではないが、彼は中々に出来る男だ。流石は青ノ国。
「もし、龍堂が攻めてきたら、私達は勝てるでしょうか」
鈴就の問いは不安から来るものではなく、純粋な疑問‥‥というのを装っているのだろう。影里の前ではその強がりも意味は無いが。
青ノ国の物量はかなりのもので、天ノ国と分かれ半分になった今尚、緋ノ国ならば呑めるほどの物量がある。
兵の数、兵器の数、物資の量。
何をとっても、緋ノ国は青ノ国の足元にも及ばない。
簡単な話、もし龍堂に攻められたら、非常に危ないと言うことだ。
だが。
「勝てますよ」
さも当然のように、影里は答えた。
「龍堂は青ノ国でも結構な存在感を放ってましたから、俺もよく知ってます。奴がどんな戦を仕掛けてくるかもね」
「おまけにこっちは防衛戦。策練り放題、罠仕掛け放題。有利なのはこっちですよ」
鈴就は眼を開き、此方を見る。
年相応の幼い顔が驚きの色に染まる。
それに影里は、年不相応の幼い顔に笑顔を浮かべて答えた。
「ま、見ててくださいよ。程ほどに圧勝、が俺流のやり方なんで」
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