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◆◇◆
「‥‥青ノ国では既に戦支度を終えた部隊の姿も見られます」
「へぇ。やっぱり青ノ国だったんだ」
「大方はあなたの予想した通りです。敵軍の大将は龍堂青嵩。真正面からぶつかってくるつもりでしょうね」
数で押し潰すつもりだろう。しかしそれだけでもないはずだ。龍堂が数だけに任せた力押しをするとは思えない。
だが、真正面から攻め入るのは彼らしい気もした。こちらを格下だと知って、いや、だからこそ真正面から正々堂々挑んでくるのだ。
「‥‥まぁ、なんとかなるさ」
「随分と楽観的ですね」
「悲観的になった時点で負けだよ。こういうのは気の持ちようさ」
なんにせよ、必ず勝たなければならない戦いになる事に間違いは無いのだ。
「さて。近々忙しくなるなぁ‥‥」
「すぐには動かないのですね」
「明日から頑張ろうかなって」
「それは駄目な人が言う傾向がありますが」
「あ、なら大丈夫。俺、やればできる人だから」
「‥‥‥‥‥‥」
◆◇◆
結局、琥珀はそのまま部屋を立ち去った(襖から)。
彼女にはまだ色々と頼み事をしている。幼いながらも優秀な忍だが、如何せん口うるさい。
その上人見知り(?)で気難しいところもあるため、未だに馴染みきれていない。
(‥‥数少ない情報収集係とは言え、心細いだろうなぁ‥‥)
影里は彼女以外の忍を知らないし、彼女に《直接過去を聞いたことは》ない。
しかし彼女に同業者がいない事は知っているし、友人もいない事もなんとなくわかっていた。
それが忍の定めなのかもしれないが‥‥
(黒ノ国を抜けたのには、それなりの理由があるんだろうし)
抜け忍となり、身体に消えない傷を刻み付けてまで、彼女が此処にいる理由は何なのだろうか。
いくら考えた所で、今の段階では答えは出ない。
その答えは、彼女のみが知っている。
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