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「あ…」 声に出るとは思わなかった。 まるで見付かりたかったみたいに、素の声で普通の声量で声が出た。 その声に、彼だけじゃなく寄り添っていた女の子も反射的にこちらに視線を向ける。 綺麗に整った顔。きちんと施された化粧。何よりも頬が上気して目がきらきらしていて全身で幸せを醸し出している。 それに対して私はスッピンのまま家から数分のコンビニに立ち寄るだけの適当な出で立ちで、手にはスナック菓子と炭酸の入ったビニール袋を持ち、何もかもが居たたまれない。 意識的に顔を俯き加減にして、無言で会釈して足早にその場から立ち去る。 こんな所で会うなんて。 完全に気を抜いていた日曜日の朝10時。まさかコンビニの前で会うなんて何てツイてない。 そして、何故私がこんなにも惨めな気分にならなきゃいけないのだろう。 別に私が彼を好きな訳じゃない。 彼が私を好きなだけだ。そして、彼に告白されて断ったのは私だ。 カッコ良くて穏やかで頭が良くて生真面目で品が良くて草食系で年下にも好かれるお兄さんタイプの生徒会副会長。 同じクラスでもなく、ただ何回か友達に連れられて行った放課後の体育館でバレーボールの部活に勤しむ彼を見かけただけだ。 そんな彼に告白されたのは3週間前。
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