1人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ……」
さっきまで高鳴っていた鼓動が嘘のように収まり。
騒がしい群衆に背を向け、俺はゆっくりと重たい足取りで自分の家に向かって歩き出す。
おじさんに何て言えば……
昨日の朝食からずっとカツ丼ばっかり食わせてくれたおじさんの顔を思い出す。
「しかし、志望校を一つに絞って自分を追い詰める作戦はいいと思ったんだがな」
まあ、追い詰めてもそこまで勉強してなかったことを考えると当たり前の結果だった気がする。
というか何でそんな状態のくせにさっきまで受かる気でいた俺。
その自信はどこから来ていたのか気になるところだ。
などと自分を責めているときに右ポケットが震えた。
電話?……まさか、おじさん!
番号を見てホッと一息つくと電話に出た。
「もしもし、美代子さん?」
「もしもし......太陽様ですか?」
携帯電話からいつもの優しい声が聞こえてくる。
「そうだけど、どうしたんですか?」
「その……ですね……」
……?
いつも物事はハキハキ喋る美代子さんが言葉に詰まるなんて、それに少し泣いてるみたいだし……
その俺の疑問を答えるように美代子さんは話す。
「実は今し方……銀河様が亡くなられました」
えっ……
「じ、爺ちゃんが……?」
最初のコメントを投稿しよう!