ハネル水音

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時間は午後の十一時。 吉原があたしの部屋に来てから、まだ一時間も経っていない。 ワイシャツの袖に腕を通す吉原は、もう家に帰ろうとしているって何も言わなくてもわかった。 セックスの終わりはいつもどこか切ない。 切ないから、彼を見ないでキッチンの冷蔵庫を開けた。 「クニ、なんか飲む?」 いつものように愛称で呼ぶ。吉原の名前は邦弘。だから、クニ。 「水か、お茶」 「うん」 グラスを二つ取り出し、朝作ったばかりの麦茶を注いだ。 身支度が終わって、シーツカバーが少し乱れたベッドに吉原は座っていた。 「麦茶でいい?」 「ありがと」 吉原はグラスを手にとると、一気に飲み干すから噴き出してしまう。
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