湖面の月

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「遅いぞ!涼!」 太一は桟橋に括られたボートのロープを解きながら、 怒気を含んだ口調で睨みつけてくる。 時間は10時を少し回っただけなんだけど…… 「ゴメン、 ゴメン、 なかなか綾が言うこと聞いてくれなくて。 まさか、 宝探しに行くなんて言えないし……」 言い訳を聞いている暇なんかないと言わんばかりに、 「とにかくボートに乗れ!」 ボートに乗せられ、 オールを持って早速漕ぎ出し、 どんどんと陸地から離れていく。 「何をそんなに慌ててるんだよ?」 僕の問いに、 ハァ~ と小さく溜息をつき、 再び怒り口調で、 「お前、 昼間の俺の話全く聞いてなかっただろ!」 ボートを漕ぎ進めながら、 「今日の目的は宝を手に入れる事! これは分かるな!」 相変わらず強い口調の太一に対して、 僕は黙って頷かざるを得なかった。
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