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一、二、三、四……。
廃工場の中にいる人の数を確かめる。
幾つかに積まれた荷物や、今はもう動くことのない機械があるので、正確な人数は分からないが確認できるだけで四人。
「しかし、なんでこんなことに……」
荷物の陰から顔だけを出し、坂上想真は溜め息とともに言葉を吐き出した。
黒い髪に、学校指定のブレザー。今年の新入生である坂上の制服はまだ新しい。
「まだそこらへんにいるはずだ、探せ」
敵の一人がそんなことを言う。「おおおあ!!」とか、よくわからない体育会系のノリにうんざりしながら、この廃工場の出口を探す。
今いる場所から少し離れた場所に、それらしきドアがある。
しかしそこに行くためにはどうしても隠れながらでは行けそうにない。
なんとかしてバレずに行けないものかと考えていたその時。
「っっっへっくしょおおおい!!」
埃が鼻をくすぐった。廃工場なので、当然のように埃にまみれているということを考えてなかった。
ハッと気づいた時には時既に遅し。
「見いいつけたあああああ!!」
かくれんぼでもしているのか言いたくなるような、見事な発声だった。
ニヤリと笑う男が、後ろにいた。
白いタンクトップに紺色のジーパン。ボディービルダーにも引けをとらない見事な筋肉を見せびらかす見事な服装である。
「なんでそんなにムキムキなんです……?」
ザザ、と足を後ろに動かしながら、震えた声で坂上は問う。
「筋肉は……」
そう言い、男は言葉を溜めうつむいた。
「……?」
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