第1章

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高校一年、じめじめした梅雨の季節なのに、そんなの関係ないくらいの出会いをした。 ここ最近湿気がひどく、高橋悠月(たかはし ゆづき)の髪はひどく落ち着いていた。 これが癖っ毛や天パの人ならそりゃもうウネウネと毛先が暴れまくっていただろう。 しかし悠月の髪は直毛に猫っ毛なものだからぺしゃんとボリュームをなくしていた。 湿気にすら負けるこの髪質が、ヘタレな自分にそっくりだとまた悲しくなった。 教室に着くと、いつもつるんでる菅原大樹(すがわら だいき)が朝からイライラしたオーラを放ちながら髪と格闘している。 またかとため息を吐きたくなったがこちらまで陰のオーラを漂わせるのは嫌なのでぐっと飲み込んだ。 「まーたやってんの大樹は。今日のは手強そう?」 ポンと肩に手を置くと大樹はこっちを一睨みし、また鏡のほうを向いた。 大樹の髪は前髪を覆うほど長く、量も多い。 そんな髪型をしてるんならお洒落に興味ないやつだろうと思われるが、軽くパーマをかけていてそれは大樹の個性的な服と非常にマッチしている。 高身長で奇抜な髪型や服が似合う原宿系お洒落ボーイなのだ。 そんなお洒落で小物も毎日コロコロ替えてるやつだが、唯一毎日着けてるのが深緑の三角のストーンが、付いた首飾りだ。 何か深い意味があるのか悠月は知らないし興味もなかった。 そんなお洒落ボーイとは打って変わって、悠月はあまり自分の見た目にこだわらない。 そりゃ寝ぐせが付いてたら直すし眉毛も多少整えているが、大樹ほどではない。 今日もいつも着ているベージュのカーディガンを羽織ってきたが、気温も高くなってきてるしそろそろやめようと思っているだけだった。 やっと自分の思う通りになったのか、大樹はハーっと長い息を吐いた。 「終わった?」 「……梅雨なんかなくなればいいのに」 「大丈夫。みんなそう思ってるから」
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