第1章

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一限目の数学の時間も半分を過ぎた頃、悠月は目の前の問題を解くのにかなり集中していた。 そんな中、 「おはよーございまーす!寝坊しました!」 勢いよく開いた戸とデカい声にびくりと肩が動く。 にへらーと人懐っこい笑みを見せながら教室に入ってきたのは金城彼方(きんじょう かなた)だ。 裏表のない性格であっけらかんとしているところが長所と言えるが、今のこの状態では明らかに短所だった。 思った通り先生に怒鳴られ必死に謝った彼方は自分の席へと着く。 着いてすぐにぐるりと後ろを向き、 「今日いい夢見ちゃってさ、目覚めたくなかったんだよねー。こう両手にでっかいポッキー持っててさ、もーどっちから食べるとか悩んでたら全っ然決めらんねーの!」 などと悠月に話しかけてきた。 悠月と彼方は席が前後ではじめはそのテンションについて行けなかったが、今はそれに慣れてむしろ仲良くなっている。 しかし騒がしい彼方の近くにいると、頷いていただけの悠月も一緒に怒られてしまうこともたまに、いや、結構あった。 そして今日も例外ではなく、 「金城、高橋、前に出て問一と問二の答えを書け」 と先生に指名され、間違った解答を黒板に書く羽目になった。
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