第1章

7/11
前へ
/11ページ
次へ
次の日もやっぱり雨だった。 服も鞄も靴も、乾かしたけどどこかまだ湿っぽい気がする。 うんざりする天気だし、学校に行けばまた大樹は髪と格闘し険悪な雰囲気を醸し出していると考えると、悠月はやるせなくなった。 しかし朝教室に入るや否や、悠月はクラスの女子、遠藤火蓮(えんどう かれん)に話しかけられた。 「高橋おはよ!ちょっと話あるからこっち来て!」 結局教室には入らず、そのまま廊下にでることになった。 火蓮は目立つ髪色をしていて、姉御気質なタイプだった。 見た目は派手だが面倒見はいいし、悲しんでいる子や悩んでいる子がいたら首を突っ込まずにはいられない。 だがしかしそれが裏目に出て、ただのおせっかいになることもしばしば。 そして水緒といつも一緒にいる女子の一人だった。 「ああ…遠藤さんおはよ……」 「ちょっと高橋に協力してもらいたいことがあるんだけどいいかな?いいよね?」 ぐい、と肩にかけていた鞄をひっぱられる。 距離が近くなったせいか、いい香りがした。 「な、何?とりあえず話聞いてから……」 「そんな難しい話じゃないの。ちょっと友だちの恋のお手伝いをしてほしいだけなのよ」 友だちの恋の手伝いほど面倒くさいものはないと悠月は思ったが、そこは口には出さなかった。 「つくしがね、菅原くんのこと気になってるみたいなんだけど、それで週末ちょーっと遊び行くってのはどお?」 つくしってのはいつも火蓮と一緒にいる佐竹土筆(さたけ つくし)のことだろう。 つくしも火蓮と同じように目立つタイプだが、どこか火蓮に着いてまわってるようにも見えた。 仲はいいが主従関係があるような、悪く言えば火蓮の顔色を伺い仲良くしようと頑張ってるんではないかと思ってしまう。 良く言えば空気の読めるつくしが、あの我が道を突き進むタイプの大樹を好きになるなんて予想外だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加