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「ぐぅわぁぁー!」絶叫する兵士。
「『屍魔(しま)』の伝説は本当だったんだ!?」瑠璃(るり)の震える口から言葉が漏れる。
身体からみりみりと剥がすように、『Z』が霊体を噛み千切った。
「霊が喰われた!?」奏音が言った。
不可視の血飛沫が視えるような陰惨な光景に、奏音は身震いした。
〈ぐちゃり、ぐちゃり〉
『Z』が霊体を噛むと、味覚まで感じるような咀嚼音がした。
「か、噛魔(かま)れた!」白目を剥く兵士が絶叫した。「魔染(ません)して俺も『Z』に成る。は、早く俺を殺してくれ!」
哀願する兵士の願いは叶わず、『Z』が振り回すように兵士を投げた。
「ぐぅはっ!」兵士が断末魔の叫びを上げる。
投擲された兵士にぶつかり、奏音は受け身を取りながら地面を転がった。
「奏音くん!?」瑠璃が思わず悲鳴を上げる。
奏音の側に転がる兵士は、ピクリとも動かず絶命していた。
霊体を喰われる激痛でショック死したのだろうか!?
呆然と地面に転がる兵士を見ていた奏音の前に、『Z』が獲物を見据えた獣の如く迫る。
「グルルルゥ──!!」『Z』が満月に向かって咆哮した。
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