第2話「鴉鳩の鳴く夜」

37/40
前へ
/200ページ
次へ
「やれやれ、とんだバカンスだな……」頭を掻いて、「お前らと、まさか一蓮托生になるとは……これだから世の中は面白い!」不遜に笑った。 「……ッ」沖鳴が硬い表情でうなづいた。 「まったくだ」斎妃が玲瓏な声で笑う。 「カノン、お前が頼りだ。見えない屍魔をオレたちに指示してくれ」乱摩がコンバットナイフを手渡して言った。 「わかりました」奏音がナイフを握り、皆を見渡した。 島中の屍魔を相手に、たった4人で戰いを挑むのだ。それでも皆の顔に悲壮感は皆無だった。 「死ぬには良い日、かな?」乱摩が苦笑した。「お前ら、ガキの癖に良い面構えしてるぜ!」チュッと投げキスをした。 港からの坂を無数の屍魔が登って来る光景は、まるで地獄から這い出る百鬼夜行のようだった。 「そんじゃまっ、戦闘開始と行こうか!」乱摩が火の着いたタバコを投げた。 ジュボッ!と軽トラが燃え上がる。 パーキングブレーキが解除された軽トラが、坂道を疾走し始めた! ハンドルが固定された車は、焔が逆巻く火車のようだ。 火車とは、悪事を犯した亡者を乘せて地獄に運ぶ燃える車だ。 まさしく、地獄からの亡者に向かって行く、火の車である。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加