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「もうすぐ群れの先頭に接触します!」奏音が叫んだ。
「了解だぁ、司令官殿」H&K HK45の弾倉を確かめながら、乱摩が言った。
燃え盛る車の熱気を顔に浴びながら、奏音は目前に迫った屍魔の群れを視た。
それは昨日まで見知った人々の、成れの果てだった。
何の疑問も抱かず、日常を生活していた島の人々。
そして、昏い島の闇に微睡みながら、永遠を享受していた亡霊たち。
それらが屍魔と化し、奏音たち生者を喰らいにやって来た。
「来ます、1時の方向!」奏音がナイフを閃かせる。
青い汚泥と化した屍魔が、車の中央を通過した。それは商店のオバさんだった。
「……ッ!?」沖鳴が唇を噛んだ。
「次っ、9時!」奏音がナイフで支持した。
「応っ!」沖鳴が支持に従って、不可視を解いた屍魔をナイフで貫いた。
それは村役場の事務員だった。
軽トラの火車が、屍魔の百鬼夜行に呑み込まれた。
その頃には屍魔も、不可視を解いてわらわらと押し寄せて来た。
〈ガッシャーンッ〉
燃え盛る炎の熱で、フロントガラスが割れた。
奏音を取り巻く周囲には、地獄の亡者が溢れた悪夢の光景が拡がっていた。
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