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【1943年10月29日未明の父島要塞】
1941年から始まった『大東亜戦争』は激戦の一途を辿り、一ヶ月前の9月には南鳥島へ、米軍の空襲と艦砲射撃が開始された。
軍需拠点として重要視されていた小笠原諸島の父島は、本土防衛のため完全に要塞化された鉄壁の島になっていた。
海軍の第7根拠地隊から新たに改変された父島方面特別根拠地隊司令官として、松岡終造(まつおか しゅうぞう)中将は父島の守備に当たっていた。
「ですから、米軍は飛行場適地がある硫黄島へ進攻すると自分は判断します」
「ふぅむ……」副官の筒川 玄蔵(つつかわ げんぞう)少将の進言を聞いた松岡は唸った。
硫黄島には陸軍の伊支隊と海軍部隊が所在していた。
しかし進撃して来る米軍に対して、硫黄島が長く持ちこたえることができないことは明白であった。
硫黄島が奪われたら、其処を拠点に本土が空爆される。
それだけは何としても防がねばならなかった。
ならば父島要塞守備隊を再編成し、硫黄島に配備しなければならない。
「ご苦労だった、筒川少将」松岡は言った。
「はっ、失礼します」敬礼して筒川が退室しようとした。
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