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そして私がその山に目線を移して眺めていると、また彼女は話し始めた。
「だけどね、ひとつだけ条件があって、自分が山に行くことは誰にも告げてはいけない。そして手ぶらで山に登ること。」
「え?手ぶらでって...。もしも、霧の中で迷子になったらどうするの?携帯くらいは、持って行ってもいいかな?」
「絶対にだめ!」
「なんで?」
「何故なら、山の中で迷子になることが目的だから...。」
何それ?私はまだ、彼女の言っている意味がよく分からなかった。
「既に静かに眠っている魂を呼び寄せる為には、心配してもらう必要があるの。秋森さんの事が心配になって、きっと蛍になって会いに来てくれるはずだから!」
「そうなの?」
「うん。そしてね、きっと秋森さんのおばあちゃんが、霧の中で光りながら家まで案内してくれるはずだよ!」
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