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私は、少し複雑な気持ちだった。何故なら、おばあちゃんに心配はかけたくなかったから。それに私が道に迷ったところで、本当に助けに来てくれるという保証はないし。 それでも、私は試してみたかった。おばあちゃんにどうしても会いたかったんだ...。 私は、元々はおばあちゃんっ子だった。両親が共働きだった為、家に帰るといつもおばあちゃんが私を出迎えてくれた。 私が学校での出来事を話すと、いつも優しい声で頷きながら聞いてくれたおばあちゃん。私は、そんなおばあちゃんが大好きだったんだ...。 その日の夜、私はこっそりと家を抜け出した。山の麓までは歩いて15分くらい。今日はちょうど霧も出ていて遠くはよく見えないが、もうすぐ山に着くはず。 「着いた!」 私は、思わず叫んでしまった。ここまで来たら、もう後戻りは出来ない。霧に包まれたこの山を登れば、確実に迷ってしまうだろう。 少し怖かった。だけど私は彼女の言葉を信じて、一歩、そしてまた一歩と見えない山道を登って行った。
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