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登り始めてからまだ数分しか経っていないと言うのに、私はどこを歩いているのか分からなくなってしまった。 「おばあちゃん、早く来て...。」 私は、そう呟きながらその場にしゃがみこんだ。霧の中の夜道をひとりで歩くのは、やっぱり心細い。辺りを見渡しても、蛍の光など見当たらない。 このまま来てくれなかったらどうしよう...。私は段々と不安になり、気が付くと目から涙が溢れ出していた。 そして涙を手で拭い、目を開けた時だった。目の前で小さな光を発しながら飛んでいる一匹の蛍を見つけた。 「おばあちゃん!おばあちゃんなの?」 私がそう言うと、その蛍は私の胸元に止まり綺麗な光を発した。 「来てくれてありがとう!私ね、ずっとおばあちゃんに会いたかったんだ...。」 その蛍は何も言ってはくれなかったけれど、私には分かる。おばあちゃんは、蛍になって私に会いに来てくれたんだ。 私の胸元に止まっている蛍は、まるで私を優しく包んでくれているかのようだった。とても懐かしいおばあちゃんの温もり。それは、私が大好きだったおばあちゃん...。 しばらくするとその蛍は、私を導くかのように光ながらゆっくりと飛び始めた。
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