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「嘉人どっか出かけるの?」
「ちょっと買い出しと郵便局に・・多分一時間ちょいくらい」
「了解。なんかやっとけばいいことある?」
「あ、風呂掃除頼んでいいか?」
「おっけ、トイレもやっとく」
「よーし、じゃあちょっといつもよりいい肉買って来てやる」
「やった」
俺は財布とエコバックを手に家を後にした。
日常編『雷。』
ゴロゴロ・・ピカっ!!!どどどん!ピカっ!
「・・案外近いだろこれ絶対」
買い物を済ませ、空を見上げると曇天。土砂降り。そして雷。
そして雷で真っ先に思い浮かぶのが・・
「アイツ大丈夫か・・」
響は昔から雷が苦手である。
小学生の頃は雷が鳴れば俺に抱きつきたがっていたし、夜は独りでトイレにも行けなくなる程で、俺の部屋に枕を持ってやってくることもあった。
中学生になってからは抱きつくこともなければトイレも独りで行くようになった。部屋にも来なくなった。
でもまあ人間苦手なモノは苦手なわけで、音には若干ビビリ気味だった。
『こりゃ響ビビってんだろうな』と思いつつも、まあそんなにぼんやりとしているわけにもいかない。
「傘・・どうするかな」
用は忘れた。天気予報も確認しなかった自分が悪い。
そうこうしていると雨は増し、更に雷の音と光がの差が無くなる。今落ちたのなんて絶対近いだろ。
スーパーのは売れ切れちゃってるし、響呼ぶのも可哀そうだしな。
なんて思っていると・・
「あー、やっぱり忘れてる」
「響・・」
響が傘をさしながらやってきた。
「傘ちゃんと家におきっぱなんだもん。天気予報見なくても曇り空見て持っていかなきゃでしょ兄さん」
「よく来たな」
「正直涙目」
「だろうな。悪い」
傘を受け取る。
が・・
「おかーさん。どうする?傘ないよー?」
丁度スーパーから出てきた親子。空を見上げて途方に暮れている。
「「あのっ」」
―――――・・
「ハモったな」
「ホントそれ」
親子が傘をさし、帰っていく姿を確認すると二人で一本の傘の中に入りながら家へと向かう。
どのタイミングで受け取られたか覚えていないが、気づけば買い物袋は響の手にある。
「・・お前、雷まで苦手じゃなくなったらなんかズルいぞ」
「え?」
見上げると、濡れないようにと俺寄りに傘を差し、少しだけかがみ気味の響がこちらを見て笑った。
完
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