第1章「すれ違い編」

4/6
前へ
/642ページ
次へ
仕事でイヤな事があった。 私生活でもイヤな事があった。 嫌なことを全部忘れたくて、ロクに飲めもしない酒を浴びるように喉へと流し込む。 一体自分は何をしているのだろうか・・。 情けなさと自分への苛立ちで、徐々にアルコールは回っていく。 そしてぶっ倒れるようにソファに倒れ込んだ。 それから・・ なんだ・・ 身体が妙に熱い 酒によるそれとは違う、刺激を繰り返されることで生じる熱。 いつの間にか、自分は眠ってしまったようだった。 夢の中の自分は本能のまま快楽に溺れ、理性なんて制御するものは最初から存在しないかのように身体はうずき、熱くなっていく。 もっと触って欲しい・・ 息が苦しい・・ おかしくなりそうだ 何処から押し寄せる快感かもわからぬまま、刺激をただひたすらに求め続ける。 もっと・・もっとっ そして俺は自分の荒い息に驚き目を覚ました。 「兄さん・・」 目を覚ますと天井は見えず、四つ下の弟の顔が俺を見降ろしていた。 「おはよ。・・起こしちゃったね」 起こしたもなにも、身体がこうもビクビクと脈打つくらいに色んな所を弄られたなら、誰でも起きる。 まだ夜は明けていない。 眠りについてからそんなに時間は経っていないのか・・。 寝る前の記憶は曖昧だが、酒を飲んだところで脱ぎ魔に豹変したりはしない。 けれども俺は今、シャツのボタンは全て外れ、胸板露わに肌蹴ている。 自分の状況を理解し、弟を見つめる。 「お前、いつから・・」 「・・息荒いよ兄さん」 俺の質問はまるで無視。 「いつまで乗ってる。どけ・・」 今一番会ってはならないお前が何でここに居るんだよ・・。 「・・顔も赤い」 「どけ」 「・・どきたくない」 「俺はお前にどいて欲しい」 「じゃあ最初から・・上に乗っかって兄さんにキスしたり色んなところ触ったりする前に抵抗してよ」 「っ」 そんなリアルな内容を言われると耳や口、首筋の湿り気、少しヒリヒリする乳首を意識してしまう。 俺の上にまたがりながら身体を擦り付けるかのように腰を動かし始める 「兄さん・・俺、どうしたらいいかな・・」 俺は潤んだコイツの瞳を見まいと顔を背ける。 「兄さん・・俺、兄さんに触って欲しい」 「両手縛っといて何言ってんだ・・」 俺のネクタイは本来の使い道ではなく、自由を奪うための道具として両手首にがっちりと結ばれていた。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加