第1章「すれ違い編」

5/6
前へ
/642ページ
次へ
「・・ネクタイ、しわになる」 「いいでしょ別に。別れた彼女からのじゃないコレ?・・誕生日、一緒に選んでほしいっていわれたから良く覚えてる」 っ・・ 少し声色が暗くなった そして合い鍵を取り出しちらつかせる。 「『彼女が使わないなら俺がもらっていい』って聞いたとき、兄さん頷いたよね?・・兄さんはさ、俺が兄さんに対して特別な感情持ってるの知ってたはずだよね?・・知らないなんて言わせないよ。」 俺は顔を逸らしたままだ。 「コレ渡されてから兄さん俺から距離置くようになったよね。なんで。なんで俺の気持ち知っといてそんなことするんだよ」 ・・・・。 「・・何で黙るの。まだ酔ってる?」 話の最中も弟は挑発するかのように身体を密着させてくる。 しかし、ぴたりと止めた。 顔を背けたままの俺は弟の様子が気になり恐る恐る弟の顔を見る 「やっとこっち見てくれた・・丁度いいよね。どうせ酔ってるんだしさ。」 弟は口調とは真逆の、今まで見たことのないやるせないような、そして悲しい表情を浮かべていた 「・・ヒドイ事、してもいいかな」 再び俺へとのびてくる手。 「触るなっ・・」 俺に触れる手だって・・、あのいつもの優しさが感じられない・・ 恐い・・嫌だ・・やめて・・頼む・・っ そんな気持ちは今のこいつには届かない・・ 「どうしてなの・・」 「こんなこと・・やめてくれ・・っ」 「・・なんで俺の事、拒むの?・・なんで俺はダメなの?」 こんな・・こと・・やっぱり間違っている。 最初から分かっていた。 もっと早く引き離すべきだったんだ・・ 「なあ、頼む・・頼むからもう・・昔に戻ろう・・こんなこと、するなんて・・おかしいっ・・」 それでも弟はやめようとしない。 止めてくれない。 聞こうとしてくれない。 嫌だ・・こんなの、いやだ・・もうこれ以上、苦しみたくないっ・・
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加