隠されていたこと。

2/10
2368人が本棚に入れています
本棚に追加
/642ページ
「っ・・・はあはあはあはあ・・・・っ」 また、だ・・  こめかみからじんわりと汗がでているのが分かる。 最近妙な夢にうなされる。 昔付き合った人の夢。 恨まれて生霊にでもなったんじゃないかという頻度でここ最近ずっとだ・・ 弟はあの日以来、身体を触ろうとするどころか、あまり連絡をよこすことがなくなった。アイツのけじめか、それともやはり一時の迷いであったのか、俺は確認することもなく、日常を送っている。 「・・はあ・・」 流石にこんなにうなされてはと悩んでいると、同僚に「いい先生が居る」とカウンセラーを紹介された。 こんなんで治るかと半信半疑であったが、連絡しておくから行ってみろと既に行く手配をされてしまっていた。 そしてその予定日が今日。まさかその日にまたうなされるとは・・ 身支度を済ませ、紹介された住所をナビで検索し向かうことにする。 「ここか・・」 家の最寄から三駅先、徒歩15分。たどり着いた先は普通の家。 「・・井上・・ここだよな。」 同僚に渡されていた名刺と同じく、表札にも『井上』と書かれている。 インターホンを鳴らす。 「はーい、あ、元木君の紹介された方?」 中から五十代半ばほどの男性が出てきた。どうやらこの人のようだ。 軽く挨拶を交わし、持ってきていた茶菓子と名刺を渡すと少し驚いた顔をされた。 「どうかしましたか?」 「ああ、この店のケーキ好物なんだ。元木君から聞いたのかい?」 「はい。良かったら召し上がってください」 中へと案内される。 リビングのソファに腰を下ろし、お茶を用意される。 「なんでも夢にうなされてるらしいね」 用意されたお茶からはほのかにライチの香りがする。 「知り合いから貰ったんだ。ライチ茶。珍しいよね」 「いい香りですね・・」 一口お茶を口にし、例の夢について話しだした。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!