番外編『貪欲』

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「・・・・・・・・・」 以前までの嘉人だったら、 こんな事、絶対に俺の前でも言ったりしなかった。 指輪を置いて、1人先に出発して、独りぼっちにしてきたのに。 健気に俺の名前を呼びながら、冷えきった指先を中へと差し込み動かして見せる。 『ひびき・・・』 その細い指では足りないのだろう。 2本の指で中を刺激したところで、いつものような快感には程遠く、もどかしいのか、ぽたぽたと涙を零す。 響はテレビ電話を繋げたまま、拓海にメッセージを送る。 『今日、なんかあったんですか』 既読。 直ぐに返信が返ってきた。 『先輩の同期の慰め会だよ。どうも彼女が半年前から仕事で月2ペースで出張行ってたらしんだけど、 出張先で浮気してたのが、発覚して別れたんだと。』 俺が既読をつけて返信をする間もなく更に返信が。 『もう見てられなかったわ。先輩わっかりやすく青ざめてくんだから。完全にお通夜。』 このタイミングになんて慰め会だ。 『今じゃねえなって俺でも思ったわ。まあ、事前に知らされてたのが『フラれた』って事だけだったし、仕方ないけどな』 『あと、先輩に介抱されてるこのノンケ野郎。一応響も顔覚えてた方がいいかと思って送ったけど、本気で先輩怒るなよ?』 ちょっと本気で怒りかけていたので苦笑。 その後も拓海に返信を返し、終えると再び嘉人の映る画面を見る。 先程暗く見えた表情の意味が今なら画面越しでもよくわかる。 『ひびき・・・』 拓海にメッセージを返す間、少しだけ無言が続いた事に違和感を覚えたのか、嘉人が不安そうに名前を呼ぶ。 「嘉人、スマホ耳元に持ってきて」 声が返ってきてホッとしたのか、嘉人はこくりと頷き、目元を一度擦ると、スマホを取るために体勢を変える。 顔だけが写った状態になる。 嘉人はこちらを見つめていた。 帰ってきて、戻って来てと表情を見ただけでそんな思いがこちらに伝わってくる。 『嘉人大好きだよ』 「っ・・・」 『愛してるよ』 急に耳元で愛の言葉を呟かれ、嘉人は動揺してしまう。 『顔赤くなってきてる。可愛い』 嘉人は思わず画面に映る響から視線を外す。 『こっち見て。嘉人の可愛い顔見せて』 何処か甘えるように、優しい声で響は続ける 「急に・・・、そんなの、こまる・・・」 『でも見たい』 嘉人は何かを考えているのか、反応が無い。 「・・・・・・」 『お願い』 「・・・・・・」 『触れたくても触れられないんだ。お願い』 すると、嘉人は困った表情を浮かべながら、再びスマホ画面をそっと覗く。 『嬉しい。目、潤んじゃってる。大丈夫?』 大丈夫じゃないのを分かっている癖に。 我ながら性格の悪い質問だ。 「大丈夫な、わけ。ないだろ・・・」 出勤先の浮気話の後に、俺の職場が女性ばかりだと発覚。 無理もない。 『そう。途中で止めちゃったもんね。ごめん』 でも知らないフリ。 嘉人は多分、励まし会の事は俺には知られたくないだろうから。 『嘉人の可愛い顔。もっと見たいな』 嘉人が返す言葉に迷っている間に続ける。 『ねえ。・・・指先で脇腹さすって見せて』 嘉人は、言葉を返すのをやめた。 そして、画面越しでは分からないが、嘉人の肩が少し動くのが見えた。 おそらく、嘉人は俺の指示に従っている。 『俺に触られていると思いながら触れて』 すると、嘉人は一瞬戸惑いを見せたが、俺と目を合わせた後、ゆっくりと目を閉じた。 『そう・・・、太腿もゆっくり撫でるよ』 嘉人は無言のまま、ゆっくり息を吐いた。 『仰向けの状態になろうか』 嘉人は素直に従う。 『左の膝たてて。そのまま太腿から脇腹も触れるよ・・・』 嘉人は、スマホの画面からは横顔しか見えないが、 膝を曲げ、そのまま指示の通りに手を動かしたのか、ぴくりと反応する。 『服、胸の上までたくし上げるよ・・・』 嘉人の肩が動く。 『嘉人綺麗だよ。全部丸見えだ』 「や・・・」 スマホの画面からは見えないが、嘉人は響が覆い被さる姿を想像したのか、そのまま無意識に股をゆっくりと開いていた。 『下は、次会った時に沢山突いてあげるから、今日は上で我慢してね』 耳元から響にそんな事を言われ、恥ずかしさ以上に愛してもらえる安心感で身体を火照らせてゆく。 腰が疼く。 『舐めて、吸ってあげたいけど、指で我慢してね・・・』 その言葉だけで、何をされるか分かってしまう。 『俺の指、咥えて湿らせて・・・』 スマホの画面には程なくして嘉人が指を咥える姿が映し出される。 普段は見ない角度で色っぽく指を咥える姿に響も思わず、気持ちが昂っていく。 画面の情報に一点集中してしまう為、指を咥え動かすにつれて湿り気を帯びてゆく。 ちゅぽ・・・、ちゅ・・・ぱ 更にそこから水音が加わっていく。 響の指だと思いながら嘉人は咥えている。 口先から覗く舌先が、愛おしそうに指に絡んで離さない。 『・・・嘉人』 響も次第に自身の下腹部に手を伸ばしていた。 じゅぽ・・・、ちゅぽん 「ひひき・・・、ひもちいふぁ?」 嘉人は、ゆっくりと目を開けると、 とろんとした瞳になっていた。 完全に奉仕しているつもりになっている様子だった。 可愛い。愛おしい。 感情が爆発してしまいそうだった。 『うん、気持ちいいよ。ありがとう。・・・指、もう離して大丈夫だよ。今度は胸の先触って』 嘉人は、指を口から離そうとしない。 そのまま、スマホの画面の方に顔を向ける。 『一緒に・・・、だめか』 そのお願いの仕方は反則だ。 響は、自身の硬くなった部分に触れ、 嘉人が指を動かすのに合わせて手を動かす。 『・・・「右」指で、胸。触って』 嘉人は、左指を咥えたまま、右手を移動させたのか、少し身体が動く。 『指で、周り、撫でるよ。でも先っぽは未だだからね』 嘉人は目を再び閉じる。 左指は動かしたまま。 但し、咥える指は三本に増えていた。 鼻で呼吸をしながら、嘉人はもどかしさを堪えながら、響の指示の通り、胸の周りを指先で触れる。 じゅぽ・・・んっ、ぐぽ・・・ 胸の先は既に、下腹部の其れと同様硬く敏感な状態になっていた。 (ひび、き・・・、ほしい・・・、早く・・・お願い) 『先っぽ、指先で引っかくよ』 画面上の嘉人がビクンッと跳ねた。 嘉人は腰を浮かせた。 ンっおっ 指を三本咥えたまま、嘉人は声を上げる。 『ほら、指先でほんの少しだけ触れられながらクリクリされるの大好きだもんね・・・、』 ジュボッ、じゅぼっ、グチュッ 先程よりも激しく指を出し入れする。 肩で呼吸をしながら、嘉人は左手も止めない。 それに合わせて響も手を動かしてゆく。 『トントン、クリクリコネ回されてえっちな顔になってる。可愛いよ・・・』 嘉人は常に耳元から響に囁かれながら行為に及ぶ状態に次第に興奮を覚えていた。 響もまた、普段とは違った角度での愛撫に高揚感が高まっていた。 画面からでは全身は見えない。 それが余計に興奮剤になっていた。 『気持ちイイよ嘉人・・・』 嘉人は響の気持ち良さそうにしている顔を確認したかったのだろう。 「見せて・・・」 画角が動く。 硬く大きく反り上がったソレを画面越しに映し出される。 嘉人は少し驚いたが。 そのまま再び口に指を入れた。 四本に増やし、手の平の親指の付け根の部分まで加えこんだ。 響は再び画面を元に戻すと、嘉人が指を増やして先程よりも激しく動かす姿に下半身が更に疼いた。 『エロ過ぎ・・・』 グポグポといやらしい音。 響の嘉人への言葉の愛撫も続く。 『つね上げて、そのまま硬い部分クリクリしてあげるよ・・・、えっちな声我慢しないで。可愛いよ。もっと見せて・・・』 画面越しではビクンビクンと肩を動かし、 見ない部分では腰をガクガクと震わせ嘉人は果てた。 少しの間、嘉人は顔を見られたくないのか、 右腕で顔を隠して呼吸をしていたが、 程なくして此方を向く。 「俺も・・・気持ち良くしたい・・・」 その表情は先程までの不安そうな表情は消え、 穏やかな表情を此方に向け、響が果てるまで、 嘉人は指を動かし続けた。
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