3.過ちを犯す日

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 親父に外出を告げて家を出てきた俺は、自転車を停めてその建物を見上げた。 『アパート松丘』。  夜目にも年期の入った佇まいだったけれど、メモに記されていた名前に違いなかった。  電話で教えてもらったのは、確かにここの三階だけど……。  ベランダ側に回って停めてと言われていたのだが、辺りには誰もいない。 「ん」  名前を呼ばれた気がして頭上を見上げると、三階のベランダから誰かが手を振っている。 「長塚君、こっちー」  朝倉の声だった。 「うわー、嬉しい。てっきり破り捨てたんだと思ってた」  笑顔で部屋に俺を案内する朝倉の声は、弾んでいた。 「お邪魔します」  一方の俺はあえての無表情。
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