609人が本棚に入れています
本棚に追加
「敵わないなあ……」
「え?」
「私、たぶん坂崎には一生敵わない気がする。
嶺川さん、いきいきしてるもの。
……私は、あなたを追いつめるばかりだった」
「そんなこと……。
紺野さん、私は紺野さんと働きたいんです。
紺野さんに一日でも早く仕事で認められたい」
嶺川さんにそう言われて、体の奥から嬉しい気持ちがじわじわと湧き上がってくる。
「うん、私も。嶺川さんと働きたい。
ありがとう、嶺川さん……」
「あ、もう一つお願いが!」
嶺川さんは慌てて顔を上げた。
「私のこと萌乃って呼んでくれませんか?
前から思ってたんですけど、矢野さんばっかりあだ名呼びで、ズルい!!」
ぷうっ、と頬を膨らませる嶺川さんが可愛くて、思わず吹き出してしまう。
「そうよね、わかった。
これからよろしくね、萌乃ちゃん」
はい! と、萌乃ちゃんは花がほころぶような笑顔で私に答えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!