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全国チェーンのコンビニのロゴの入ったビニール袋を提げて部屋に入ってきた長井が、室内の様子を見た途端、その顔色を変えた。
「孫さん。それから修さんたちはなぜここに?」
なぜと訊いてはいるが、ひと目で状況は理解した様子だ。
だが彼はごく一瞬憤怒の表情を見せるも、抑えた声と変わらぬ口調で続ける。
「孫さん、彼女が僕の学校の魔術師です」
「分かってるって。えろう時間かかったやん」
「チャンスに恵まれなかったから……」
「竜クン、手荒なんキライやもんなあ」
「あの」
ケダモノたちの一人、修と呼ばれた男が話に割って入る。
「今、満たちももう一人拉致りに行ってますよ」
その言葉を聞いた長井の表情が今度こそ険しくなった。
「どういうことですか? シードの採取は一人分で十分だと言ったはずですけど」
「もう一人って、そのミツルクンとやらは誰狙ってるん?」
「なんて言ったかな、男ですよ。コンビニでバイトしてる」
「ふうん。ま、予備あった方が安心やし、上手いこといったらええなあ」
自分で質問をしておいて、勢い込んだ修の返答えを聞いた途端、男は興味がなさそうに両手の指を組み合わせて伸びをする。
「さて、と。ほなぼちぼち向こうで準備始めるかな。明日の夜にまたそのコ迎えに来るわ」
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