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悲惨な包囲戦の結果、5万人の日乃元(ひのもと)守備軍はほぼ全滅するだろう。最高指揮官の逆島靖雄(やすお)中将とともに、歴史あるウルルクのアクシパ王家も滅亡するのだ。ウルルク王国は今、ウルルク民主国として、氾(はん)帝国とエウロペにあやつられたいいなりの傀儡(かいらい)政権が統治している。
「この人がタツオのお父さんか……」
感慨深げにクラスメイトがそういった。ジョージは女装しているのでまったく説得力がない。
「伝説の26人抜きで最年少で将官に出世した。近衛(このえ)四家の序列を飛び越え、つぎの進駐軍のトップの座は間違いないといわれていたそうだね」
そんなふうに呼ばれていたのは、タツオもかすかに覚えている。逆島家の誰もが父を誇りに思っていた。進駐軍の最高司令官になり、いつか逆島家は近衛四家の筆頭になる。父が生きていたころは、正月がくるたびに一族が集まって、氏神(うじがみ)様で父の出世願いをしたものだ。
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