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「断雄、なにをしてもいいから、おまえは生き抜いて、お母さんを守ってくれ。兄が進駐官になるというのなら、おまえは卑怯者(ひきょうもの)といわれても、民間人とし働き、逆島家の名前を残してもらいたい。軍人として生きるだけが、名誉ではない。素敵な人を見つけて、子を育て、波乱のない一生を送るというのも、とても勇敢で勇気がいることなのだ」  タツオは涙目でディスプレイにうなずきかけた。普通の人の人生ほど、波乱万丈(はらんばんじょう)なものはないと、タツオもようやくわかるようになった。だが、そんな大人っぽい感傷はつぎの父のひと言で、吹き飛ぶことになった。 「わたしは、このウルルクの首都と王家を死守するように、作戦部から命令を受けている。この国の都はとても美しい街で、高い壁に囲まれている。1200年も続くウルルクの王都だ。だが、今城壁をとり囲んで24万の氾帝国とエウロペの連合軍が攻め立ててくる。こちらの守備隊は日乃元が5万に、ウルルク王家の親衛隊が1万7000名。どこまでもつかわからないが、せいぜい手痛い打撃を敵に加えるつもりだ。まあ、父さんの獅子奮迅(ししふんじん)については歴史の教科書でも読んでくれ」
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