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翌日学校に登校すると生徒達が泣いていた。事情を知りたくて近くを通った生徒に聞く。
『先生が交通事故に巻き込まれ亡くなった』
昨日、俺と会わなければ、
俺が身代わりになれたら、
俺が先生を。
それからは自分を責め続ける日々が続いた。
そして年月が経つにつれて、その想いは矛先を変えていった。
俺は先生に愛されていたのだろうかと疑念が湧いては消えた。
「俺の願はもう一度先生を抱きしめること」
会って気持ちを確認する、そして愛してると伝えたい。
青年は写真に向かって呟いた。
「綺麗な月に、乾杯」
琥珀色に輝く自分のロックグラスと古いロックグラスを重ねる。
カチーンと澄んだ音が部屋に響く。
月の淡い光を浴びた、琥珀色に輝く古いロックグラスが微かに波を立てた。
写真の中の先生が微笑んだ、気がした。
翌朝、目覚めると先生のロックグラスが半分に割れていた。
割れた半分だけがそこに置いてあった。
酔った勢いで割ったにしては奇麗過ぎる半片。
どこを探しても残りの半片は見当たらない。
不意にあの店の怪しさが頭を過った。
「あの店、詐欺で訴えてやる」
青年はカバンの中にそれを突っ込むと急いで部屋を後にした。
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