11人が本棚に入れています
本棚に追加
次々に洋服が売れて行く、
僕も途中で投げ出す訳にはいかなくなり、押し寄せて来る購買者に服のコーディネートをしながら、服を売るが、
えい儘よと、いっそのこと成り行きに翻弄される事をよしとしてしまっていた。
フリーマーケットの時間が終わると、僕はくたくたになりながら、売上金の箱を確認する。
4500円か……。
本日の売上金額だ。あれだけ売った割には意外に少ない金額だ、フリーマーケットと言えど商売も楽じゃなかったな。
此処でふと思ったのだが、此が、本日の売上金額と言う事は、この箱の中身は最初から空だったと言う事だ。
詰まり僕は、空の売上金箱を取ろうとしていた。
自分の愚かに自嘲したくなる。
「ちょっとあなた、私の店で何やってるの?」
「――――!」
泣き面に蜂だ。
本物がこのタイミングで戻って来た――。
「何って服売ってましたけど」
「売ったって貴男が?」
「はあ、まあ疲れましたが……ごめんなさい」
もう逃げられない。警察に突き出されると覚悟を決めたが、彼女の口から意外な言葉が飛び出した。
「ははは、まさか『フリマ泥棒が私の店番をしてくれるとはね』」
「へ?」彼女の意味深な言葉に思わず頓狂な声をあげる。
最初のコメントを投稿しよう!