第1章

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 次々に洋服が売れて行く、  僕も途中で投げ出す訳にはいかなくなり、押し寄せて来る購買者に服のコーディネートをしながら、服を売るが、 えい儘よと、いっそのこと成り行きに翻弄される事をよしとしてしまっていた。 フリーマーケットの時間が終わると、僕はくたくたになりながら、売上金の箱を確認する。  4500円か……。  本日の売上金額だ。あれだけ売った割には意外に少ない金額だ、フリーマーケットと言えど商売も楽じゃなかったな。 此処でふと思ったのだが、此が、本日の売上金額と言う事は、この箱の中身は最初から空だったと言う事だ。 詰まり僕は、空の売上金箱を取ろうとしていた。 自分の愚かに自嘲したくなる。  「ちょっとあなた、私の店で何やってるの?」  「――――!」  泣き面に蜂だ。  本物がこのタイミングで戻って来た――。  「何って服売ってましたけど」  「売ったって貴男が?」  「はあ、まあ疲れましたが……ごめんなさい」  もう逃げられない。警察に突き出されると覚悟を決めたが、彼女の口から意外な言葉が飛び出した。  「ははは、まさか『フリマ泥棒が私の店番をしてくれるとはね』」  「へ?」彼女の意味深な言葉に思わず頓狂な声をあげる。
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