アジサイの憂鬱

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本屋での思わぬ時間経過でお茶なんてする時間はすでになく。 この前琉成くんが連れてきてくれたクロワッサン鯛焼き屋に。 あの頃はまだ発売になっていなかったアイスバージョンを私たちはオーダーした。 公園まではアイスがもちそうにない。 うん、でもそれでよかったかもしれない。紫陽花はもう咲いてないし、あそこにいけば……。 「なにこれ。外は熱くてサックサクなのに、食べたらひんやりトロ甘っ」 隣で一口食べた咲良ちゃんがまるで食レポみたいなことを言った。 まさにそれだ。 「リリ、よく知ってたね。これ」 ふと悠哉が感心したように聞いてきた。 お店知らないって言ったばかりなのに変だったかな。 「あー……うん。この前、リューセーくんが連れてきてくれて……」 そういえば、琉成くん。これが発売になったら一緒になんて言ってた様な……。 いつとか、誰ととか聞かれやしないかドキドキしながら答える。 けれど、それには特に何の反応もなく納得した二人。 うん。今それどころじゃない。食べないと溶けちゃう。 私も二人に習って無言で食べ続けた。 一番に食べ終わった悠哉が、 「こーゆーのレイト好きそうだな……」 ぼそりとつぶやくその名前に、またドキリと高鳴る。 だからっ、名前ぐらいで反応しないで、私。
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