アジサイの憂鬱

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高校の入学式に家族揃って、いや仲良しファミリーで写真を撮るなんてかなり恥ずかしい。 そんな私の思いを知ってか知らずか、はしゃいでいる親たち。 そのなかでパパだけは笑顔が引きつっているみたいだけど。 ふと見るとこっそりママと手を繋いでる。うちの両親はほんと呆れるほど仲がいい。 「梨莉(リリ)ちゃんはホントきれいになったわよねー」 キレイ…… 正直この言葉は聞きたくない。 顔の造作はパパ似で整っているのかもしれない。けれど私はそんなの望んでなかった。 「もうちょっとにこやかにしてくれたらいいんだけど」 そうこぼすママを見て小さくため息。 ママみたいに、かわいいタイプだったら微笑んでもいいけど。私が笑顔を見せたらビッチって噂されるのがオチ。 「でも。たまにしか見せない笑顔がいいんじゃない。ねー?リリちゃん」 美人タイプの紀夏(ノリカ)おばさんに言われるとちょっと安心する。私の悩みを少しでもわかってくれそうな気がして。 「本当に楽しい時は笑ってるから」 いつだって素直になれない……。
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